シロテテナガザルが良く通る鳴き声をかわしながら高い木の枝から枝へと長い腕を使って飛び移っている。
すると、一匹のテナガザルが木の枝にぶら下がったまんま困ったような鳴き声を上げた。
ちょっと待て、この先に進めない。向こうの木には枝がない!
ブラキエーション(うでわたり)という技術で森の中を飛び回るシロテテナガザルは、その長い腕を使って隣の木の枝に飛び移れないとそこから先には行けないのだ。
その枝のない木というのは、アブラヤシの木。
森の道をはさんだ向う側は右も左もずっと先まで見渡す限りアブラヤシが広がっていた。
ちょっと旅に出ていた間にこんなことになっているなんて。
これじゃ、この先にある僕が生まれた場所に戻れないじゃないか。
父さんや母さんや兄弟たちにも会いに行けない。
どうして昔からあった木をきってしまってこんな変な木をたくさん植えてしまったんだろう。
物知りのオランウータンに聞いたら、この木になる実からパームオイルっていう油を採るために人間が植えたんだって。
パームオイルは世界中でいろいろな食べ物や洗剤なんかを作るのに一番たくさん使われている油なんだとさ。
いくら自分たちが欲しい油を採るためだって、こんな、まるでバカでかい油工場のようなのを作ってしまったらたくさんの種類の木や草や花や木の実や果物であふれていて、いろんな種類の虫や鳥や動物たちが住んでいた豊かな森はもう戻ってこないじゃないか。
アブラヤシなんて僕たちは食べられないし、意味がないね。
これ以上広げないでどこかほかのところに作ってもらえないかな。
でも、それじゃ別のどこかで同じことが起きちゃうか。
それにしても、と、シロテテナガザルは考える。
人間は何万年も前から生きているのに、パームオイルなんか必要なかったじゃないか。
なんで急にこんなことまでして、そんな油が欲しくなったんだろう?

















